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庭の蜻蛉増田耕三詩集

著者
増田耕三
叢書名
現代日本詩人選100
サイズ
140ミリ×190ミリ
168ページ
製本
ソフトカバー
ISBN
978-4-86000-522-1 C0092
発行日
2024/09/01
本体価格
1,500円

個数  

 

 

 

 

 ことばのリレー・次世代に手渡したい詩叢書 

 現代日本詩人選100 №4 

 

 





          女は女に生まれない、女は女になるのだ。

          サルトルを愛したボーボワールの言葉である。

          さて、この詩集ほど男の色気が香り立つ詩集はないだろうと思う。

          つまり男は男になるのではなく、男はこのように言葉になるのである。

          生きること、愛することが下手で、ついに「言葉」になった男、

          詩人の捨てた身体がこの詩集なのだろう。

          捨てられた男の身体は時空を超えて女に重なる。

          ゆえに行間に男と女のエロスが香る。

          この詩の一行一行は、なんどでも立ち上がろうとしている。


 

 

 

… … … … … … … … … … … … … …  

 

 

 

               こおろぎ橋を渡ったのは

               三十年ほど前のこと

 

               まだ妻も子もなく

               若さを失いかけた私が

               昼のなかの橋を渡った

 

               別れたのちの届けようのない想いが

               りんりんと染みるように

               歩み去ったひとのかかとの音が

               響いていた橋のたもと

 

               こおろぎ橋を渡ったのは

               三十年ほど前のこと

 

 

                  (「こおろぎ橋」より)


 
 
 



 
著者について
 
増田 耕三(ますだ こうぞう)
 
昭和26年(1951) 高知県宿毛市生まれ
昭和55年(1980) 詩集『水底の生活』
昭和57年(1982) 詩集『競輪論』
昭和61年(1986) 詩集『続 競輪論』
昭和62年(1987) エッセイ集『四万十川だより』
平成 元年(1989) 詩集『水の街』
平成 5年(1993) 詩集『村里』
平成12年(2000) 詩集『バルバラに』
 
「兆」同人・「PO」会員