森のなかで すきとおる野呂 昶 詩集
- 著者
- 野呂 昶
- サイズ
- 128ミリ×170ミリ
- 頁
- 72ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-448-4 C0092
- 発行日
- 2021/06/10
- 本体価格
- 1,000円
ことばの木漏れ日に
すきとおるこころ
それは めぐみ
*
こころの庭で
咲く花たちを
あなたに――
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私は二十五年前から滋賀県の甲賀の山里に住んでいる。簡潔で質素、欠乏の暮らしのなかに、今までの都会の暮らしのなかにはなかった喜びがあることが分かってきた。日の出とともに起きだし、日の入りとともに眠る。家の裏の四百坪あまりの畑には、果樹や野菜や雑草とともに、虫やもぐらや蛇といった生きものが共生している。私はそれらの領分をできるだけ荒らさないように、畑を耕している。野菜や果物の三分の二は、私がいただくが、三分の一は彼らに食べてもらう。森には小鳥やリスやうさぎ、鹿、サルなどがいて、私はいつも彼らの言葉に耳を澄ます。谷川の水も流れる雲もまた私の友達である。(略)詩は感動の表現であるが、その感動は、それら動植物とのいのちの共感から生まれてくる。いや、彼らが語りかけるいのちの言葉が、私のいのちに感動をよびおこし、その言葉をそのまま書きとったものと言ってよい。(「あとがき」より)
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レモンの風
レモンを口にふくむと
かすかな かすかな
レモンの風
レモンに ほほよせると
かすかに かすかに
香りの鈴の音(ね)
● 著者について ●
野呂 昶(のろ さかん)
1936年、岐阜県生まれ。主に少年詩の世界で活躍中。絵本もてがけ、
古典文学の研究・執筆にも余念がない。詩集に『ふたりしずか』
『おとのかだん』『いろがみの詩』『銀の矢ふれふれ』など、絵本に
『ふくろうとことり』『こわれた1000のがっき』などがあり、
国語教科書に多くの作品が上載されている。
詩誌「ポエムの森」主宰。日本児童文学者協会・日本文藝家協会会員。