【絶版】雲の嶺―わたしの第二次大戦 田村照視詩集
- 著者
- 田村照視
- サイズ
- A5判変型
- 頁
- 120ページ
- 製本
- ハードカバー
- ISBN
- 978-4-86000-259-6 C0092
- 発行日
- 2013/07/11
- 本体価格
- 1,800円
【 完売しました 】
少年が北朝鮮で体験した
敗戦前後の現実を回想する叙事詩。
波乱に満ちた道のりを
飾り気なく物語り、うったえる。有馬 敲
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日韓併合から三十五年過ぎた昭和二十年、第二次大戦の敗戦まで、わたしたち家族六人は北朝鮮に住んでいた。
敗戦を知らされたのは八月十六日。電線が通じていないため、前日の玉音放送があるというニュースすら流れなかった僻地である。
いまでは当時のことを書く人も少なくなっていくばかり、歴史の本流は多くの映像や書誌にあるが、北朝鮮の辺鄙な農村での風俗や習慣のなかで、どのような暮らしであったか、敗戦前後をいかに生きのびたか、感受性の強い少年期の証言者として、ありのまま脳裏に残る衝撃的な数々の断片をまとめた。
(「はじめに」より)
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引揚船「徳壽丸」のなかは
悪臭に満ちていた
甲板には溢れんばかりの人が集まり
祭り前夜の賑わいを見せるが
まだ明けきらぬ 暗く冷たい
冬の海
やがて見えてくるであろう
日本の陸地
生死をかけて切り抜けてきた人びとは
進行方向に向かい つま先立ち
前方を見ている
たかぶる感情を抑えるかのように
白い息を吐きながら
(「引揚船」より)