歌のかけら 星の杯 加藤廣行詩集
- 著者
- 加藤廣行
- サイズ
- 四六版
- 頁
- 136ページ
- 製本
- ハードカバー
- ISBN
- 978-4-86000-264-0 C0092
- 発行日
- 2013/10/10
- 本体価格
- 2,300円
何か壊れやすいものが欲しいなら
この蒼いグラスをやろう
震えがちな指に力を入れずとも
目の高さまで持ち上げずとも
酒精の奥で黒い星雲が傾き続け
飛び散ろうとして光は粒になる
「歌のかけら 星の杯」より
日常の風景を描きながら
心象風景といつの間にか入れ換わる。
まるでそれは心の中の知的な散歩、
引き込まれる言葉の星雲――
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休みの日には休む家
休みを休んだ証拠の身形(みなり)
使い慣れたる鋏を腰に
蜘蛛の巣をかき分けて小さい林に入る
近くて遠い頭蓋の奥
鶯が一日中鳴いているのを追いかけて
余分な感情を剪り落とす
枝から枝への透明な道を真っ直ぐにする
闇の中で目を覚ます花
静寂の植え込みで眠りにつく額
見えぬものは見えないと証明する必要があるか
存在しないものと挨拶を交わすことができるか
響かぬものに世を開く力はない
定まらぬ切り口に愛想をつかして
夜はいつもひとり
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