忘れられた町並みを行く名所旧跡詩集
- 著者
- 永良弘市朗
- サイズ
- A5判
- 頁
- 108ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-405-7 C0092
- 発行日
- 2019/03/20
- 本体価格
- 1,500円
詩人は旅に生き、旅を棲み家とした求道の人である。
このたびの詩集は、名所旧跡を素材としているが、
そのなかに自身の人生の美と真実を重ねている。
読者はこの詩集を手に、
そこに描かれている名所旧跡をぜひ訪ねていただきたい。
きっと深い人生の慧智にふれられるにちがいない。
(詩人 野呂 昶)
目 次
一 都会の死角
二 湖西のたたずまい
三 丹波にて
四 大宇陀の町並みは
五 真田家の美学
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枝豆をぶら下げて
少女が裸足で歩いている
その姿に西日が当たって
そこだけが明るかった
紅のもみじと黄色いイチョウの枯葉が
路のなかほどで絡み合っていた
遠くで呼ぶ声が聞こえる
手を上げて応えた
古民家の影がたなびいて
少女の姿と二重写しになっている
誰と暮らしているのだろうか
(中略)
まろやかでやわらかいのは水や山、自然の風景だ
人もまたまろやかでやわらかい
さりげない豊かさが自然を抱え込み
人をのびやかに柔らかくしている
もうすぐ盆地の冬が土地を凍らせ
あらゆるものを記憶のそこに閉じ込めるだろう
そして酒がうまくなる
(「丹波にて」)
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● 著者について ●
永良 弘市朗(ながら・こういちろう)
1941年大阪市北区生まれ、2018年11月20日、本詩集制作途中に急逝。
所属 「ポエムの森」同人
既刊 詩集『はてしなき旅人』(2015年 竹林館)