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煌めく風リジア・シュムクーテ詩集

著者
リジア・シュムクーテ 著/薬師川虹一 訳
サイズ
A5変型判
150ページ
ISBN
978-4-86000-400-2 C0098
発行日
2019/02/14
本体価格
1,800円

個数  

 

Lidija Šimkutė

 VĖJO ŽVILGESYS

 WIND SHEEN

 

 

彼女はとても繊細な風景画家なのだ。勿論見たままの風景ではないことは言うまでもない。彼女の心の目を通して見える風景なのだ。以前シェイマス・ヒーニーの詩を訳していたとき、彼の詩集の表題に、SEEING THINGS というのがあった。「物を見る」と訳したのではなんともならない英語である。「物の本質を見る」とでも訳せばいいのだが、それではなんとなく納まりが悪いので、「物の奥を見る」としてみたことがある。リジアさんの場合もそんな感じではないだろうか。風景 landscape というのではなく、彼女の眼の奥に煌めいた風景 inscape という言葉を使った批評家がいたのを思い出す。その意味では彼女は inscapeの風景画家だと言ってみたい。   (訳者「あとがき」より)

 

 

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  THE BLUE WOOL

 

   sky hung entangled

in her hands

 

she followed the thread

to its end

 

she buried her hands

in the sand

 

her eyes entered clouds

her hair spread

dune grass

 

with lips of coral

she touched blue sand

 

and lost her fingers

      to the sky



 

 

 

青色の毛糸が

 

彼女の両手のなかで

縺れて垂れている

 

彼女は糸を手繰り

端を引き寄せる

 

彼女は両手を

砂に埋め

 

彼女の両の眼は

雲に埋もれ髪は

砂丘の草に広がる

 

サンゴの唇で

青い砂に口づけする

 

彼女の指は

    空に消える

 

 

 

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著者について

 

リジア・シュムクーテはリトアニアのサモギチアに在る小さな村に生まれた。第二次世界大戦後ドイツの難民キャンプで幼少期を過ごし、1949にオーストラリアに移住した。197378シカゴのリトアニア言語学院でリトアニアの言語、民話、文学を学び、19771987にはリトアニアのヴィルニュス大学夏季言語コースで学んだ。のち西オーストラリアのパースや南オーストラリのアデレイドで栄養士の教授として働いた。退職後リトアニア・オーストラリア両国をまたいで仕事をし、多くの国で活動している。

 

シュムクーテはリトアニア語と英語とを使って仕事をし、作品は様々な国の多くの文芸誌やアンソロジー、例えば、The World Poetry Almanac20082010, Turnrow Anthology of Contemporary Australian Poetry 2013等でも発表されている。彼女の詩は16カ国語に翻訳されている。彼女はオーストラリア語その他日本語を含む国語の詩や散文をリトアニア語に、リトアニア語の詩を英語に翻訳し、また自作の詩を様々な国や国際詩祭で朗読している。また様々なミュージシャンと共に2カ国語による5巻のCDを発表している。

リトアニア、ウクライナ、オーストリア、及びオーストラリアの振り付け師たちが彼女の詩を現代ダンス、演劇詩の公演などに用いている。

 

リトアニア、オーストラリア、イギリスの作曲家たちも彼女の詩を作品の中に使用しているし、リトアニア、ポーランド、ロシア、イギリス、オーストラリアなどでアンサンブルとして上演されている。その中には、マージェリー・スミスのWhite Shadowsも含まれている。

 

リトアニア語による詩集:The Second Longing 1978, Anchors of Memory 1982, Wind and Roots 1991, 英語による詩集:The Sun Paints a Sash, 2000, 二カ国語による詩集:Spaces of Silence 1999, Wind Sheen, 2003, Thought and Rock, 2008, Something is said, 2013, White Rainbows, 2016

翻訳 英語・日本語:『想いと磐』2014, 『何かが語られる』2016, 『白い虹』2018,『煌めく風』2019 (to be)     

 

 

 

訳者について

 

薬師川虹一(やくしがわこういち)

1929年京都に生まれる。詩人、随筆家、写真家、翻訳者(フィリップ・ラーキン、シェイマス・ヒーニー、テッド・ヒューズ・リジア・シュムクーテ等)、英文学者(イギリス・ロマン派詩人の研究)、同志社大学名誉教授、詩誌「RAVINE」前編集同人。日本バイロン協会名誉会長。国際バイロン協会前理事。

受賞歴:京都芸術文化協会賞

日本翻訳家協会特別賞、瑞宝中綬章

出版書:詩集『疲れた犬のいる風景』他

詩と写真集『石仏と語る』他

研究書『イギリスロマン派の研究』他