はてしなき旅人永良弘市朗詩集
- 著者
- 永良弘市朗
- サイズ
- A5判
- 頁
- 120ページ
- 製本
- ソフトカバー
- ISBN
- 978-4-86000-323-4 C0092
- 発行日
- 2015/12/12
- 本体価格
- 2,000円
Nagara Koichiro
詩人永良弘市朗は、文学的求道者である。市井の中に深く沈んで、
人生の喜怒哀楽を、平易な日常的言葉ですくい上げている。
詩はなんでもない言葉で、なんでもない日常的意識を超えた世界を
表現する営為だが、詩人は七十数年の人生をこの道一筋に生きてきた。
その真摯な生きざまが一編一編の作品に結晶している。
野呂 昶
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座禅を組んだ僧
無我の境地が
目をつぶった先からもれてくる
今までの苦しみが
耐えて流れた時間を揺り動かし
膨らんできた高揚を準備している
そこには
冬に閉ざされた想い
雪のふり積もったこころも柔らかく
する
静けさの空虚さを満たす沈黙の花は
あつい思いを信じて
探り当てた遠い春を
呼び戻すことはないだろう
ひっそりと待っている湿地に
春を呼び込む風が流れてきた
(「ザゼンソウ」より)